2010年12月15日水曜日

【レポート】12月14日(火)「世界一の星空を作る」@六本木ヒルズ森タワー by 大平貴之

12月14日(火)に六本木ヒルズ森タワーで行われた「アカデミーヒルズ」講演会、「世界一の星空を作る」に参加してきました。講演者は「メガスター」の大平貴之さん。

例によって会場でとったメモを手直しして貼っつけです。

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■そもそもプラネタリウム作りに興味を持ったわけ
・小学五年のころ
・理由は思い出せない

■最初に作ったプラネタリウム
夜行塗料で、紙にオリオン座を描いて、壁に貼った。
皆に驚かれたので、どんどん星座を増やしていった。
そして、人を呼んでは説明するように。

■忘れ物の多い子供だった
「忘れ物グラフ」でクラスダントツだった。
そんな自分が誉められた!
→プラネタリウム作りにハマっていく。
夜行塗料では満足できない。科学館にあるような本物を作りたい。

■雑誌の付録に、ボール紙の組み立て式ピンホールプラネタリウム投影機が
確かに映ったが、期待していた程綺麗ではなかった。
→しかし、原理を学ぶことができた

■ピンホール式では限界がある
科学館にあるような、レンズ式を作りたい。
当時は超高級品。国産化されていなかった。一つ買うお金で小学校が2つ3つ建つ。
小学校時代に、設計図までは書いたが、断念。

■高校時代のプラネタリウム
物理部で「Model-2 Project」
レンズ式はあきらめて、ピンホール式の限界に挑んだ。
穴を開けるのではなく、フィルムに星を焼き付けたものを使用。

■当時はものづくりそのものに夢中だった
・友達が、バイク通学していた
→うらやましい。でもお金も免許もない。
→ジェットエンジンを作った

何を考えたか
→自転車に付ける!安いし免許いらず。
→製作時の騒音や技術的問題から断念。

・ロケット制作
→固体燃料ロケット
→最大で全長1m。到達高度2000m。
→材質カーボンファイバー
友人はアルミ制のロケットを作っていた。レーダーに映り、戦闘機がスクランブルで飛んできた(実話)

これで色々なことを覚えた。
・プログラミング
・コンピューター
・化学反応
・物理法則
ゆくゆくは人工衛星を打ち上げたい、と思っていたが、あきらめて、再びプラネタリウムに目を向けた。

■大学時代
今度こそ、レンズ式プラネタリウムを作りたい

■その仕組み
サッカーボールと同じように、レンズを32面組み合わせて天球にする。

恒星原盤の作成が一番難しかった。
目標、星3万個。どうやって穴を正確に開けるか?
ここでロケット製作の時のプログラミングの知識が生きた。
→コンピュータに星をプロットさせる。名付けて「マイクロプロッター」

大成功!「アストロライナー」完成。
各地に上映しに行った。

■しかし栄光は続かなかった
簡易ドームか風に飛ばされ、投影機も巻き込んで壊れた。

「このままでは、駄目だ」

アストロライナーは「使いやすさ」は考えずに作った。
→重量100kg
→家の2階で作っていたが、運び出すときまでその使いにくさに気がつかなかった

■「アストロライナー2号構想」
・30kg以下。大人一人で持ち運べること(自分の体を鍛えることも考えたが、自分以外が運べないと意味がない)
・縦横46cm以下。乗用車(自宅の車)で運べること
→途中で父親が車を買い換えて計画が狂ったが、助手席に乗せることで解決
・スーパーマイクロプロッター開発。より精密な星空を。
当時社会人だったので、ボーナス2回分をはたいて、夜な夜な開発。そして完成。

名前を「メガスター」と改称。

■ハンドキャリーでイギリスへ
"How many stars?"
"One million."
"Pardon?"

重量27kg。手で持ってきた。でも世界一の数を映し出した。
当時、そんなに星を移しても意味がないと思われていた。目に見えないから。
でもオーストラリアで星空を見た経験から、目に見えない星まで再現することに意味があることに直感的に気が付いていた。判別が付かないような一個一個の星が天の川を作っている。

■国内初上映は美術館
・表参道「スパイラル」
乗り換えに使ったことぐらいしかなかった駅

ファンレターが届くようになった。
『素敵すぎて隣にいた彼氏と結婚したくなりました』
・「俺の汚い部屋から綺麗なものができた」
・「これは少子化対策だ」

■メガスターの課題
・直径12mまでのドームにしか移せない

■メガスター2
目標
・直径20mまで
・より高精細な星空
・通常の3倍(もちろん赤い)

完成品
・25mまで
・500万個の星

今まで全部で4機作った。全部に固有の名前を付けた。1号機は、プラネタリウム復活ののろし
「フェニックス」

■ホームスター
バリエーションたくさん
・ホームスターアクア
・ホームスタースパ
・ホームスターバースデイ
私だけでは思いつかなかった。おもちゃ屋とのコラボの結果。
技術は公に発表された時点で自分だけのものではないのだ。相乗効果で色々生み出される。

■本も書いた

■ネスカフェのCMにも出演
ダバダー ダーバ、ダバダー ダバダー

■当初の計画
1.メガスターシリーズ(メガスター→メガスターII→メガスターIII)
→大型プラネタリウム計画。超リアル、大型ドーム向け。
2.メガスターJr.シリーズ
→ホームスターとして実現

着々と実現中

■全天周CG映像も開発を始めた
JAXAや極地研とコラボも。
・ロケットからみた地球
・ゴンドワナ超大陸分裂の再現

■スカイプラネタリウム
コンセプトは「星空を歩けたらいいね」

星空の庭園構想
・ウォークスルー型プラネタリウム
・座席に座ってみるのではなく、美術館のように回覧するプラネタリウム
・森ビルの「都市模型」とコラボ
→自分の作った星空の下に都市が!

■質疑応答
Q.一番の挫折は?
A.よく聞かれるが、挫折の経験はあまりない。一番は、設計したデータを入れたハードディスクがクラッシュしたこと。あまり挫折がないのは、目標の設定を小刻みにして、手の届かない目標は設定しないできたから。一つ達成すると、できることが増え、手の届く範囲が増える。少しずつステップアップしていった。

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講演会の後、大平技研と森タワーのコラボで生まれた「スカイプラネタリウム」を観てきました。

4つのセクションに分かれていて、そこを「ウォークスルー」するのですが、一つ一つのセクションの「星空の中にドラマをみせる」演出が素晴らしかったです。「ドームじゃない」と侮っては損。新しいプラネタリウムの形だと思います。

2011年の2月13日まではやっているようなので、一度観に行ってみては。

更にその後、森タワー屋上のスカイデッキに上がってふたご座流星群観望、といきたかったのですが、僕が上がったときには曇っていて見られませんでした。上がる前に3つほど大きな火球が見えたと聞いていただけに、残念。

2010年12月14日火曜日

【レポート】12月10日 講演会「『はやぶさ』世界初のチャレンジ」

直前のエントリと日付が前後しますが、12月10日(金)に慶応大学日吉キャンパスで行われた、慶応科学講演会「『はやぶさ』世界初のチャレンジ ~NASAに先駆けて,なぜ日本がミッションを遂行できたのか~」に行ってきました。

例によって会場で取ったメモを手直しして貼りつけます。

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講演その1 JAXA・ISAS 久保田 孝さん(遅刻して行ったので、講演のタイトル分からず)

◇イトカワへの着陸
→はやぶさは太陽電池パドルを動かせないので、電池パドルを太陽方向へ固定した姿勢でないとタッチダウンとできない。

写真で見ると意外とイトカワの平らな部分が多いように感じられるかも知れないが、そういう理由で「はやぶさ」がタッチダウンできる範囲は非常に限定された。

◇「ミネルバ」に、「はやぶさ」から分離した瞬間に写真を撮る「隠しコマンド」を仕込んでおいた!(「はやぶさ」本体を撮影するため)

プロマネにも内緒の隠しコマンドだった。全て終わった後に「こんなの撮ってました」と見せたかった。「ミネルバ」が着陸に失敗したので、すぐ公開した。

◇ラストショット
→「撮るだろうと思っていた」

「はやぶさ」から送られてきた画像を処理するプログラムは私の研究室にあるPCに入っていたのだが、イトカワ離脱以来5年間動かしていなかった。パスワードを忘れていて焦ったが、5個目で通った。

◇カプセル回収
→回収班に「回収したら振ってみてください」と伝えておいた
→6kgもあるので重くて振れなかった

◇アメリカの反応
→「ナンバー1」はニアシューメーカーとスターダストとディープスペース1

アメリカという国は、国民に「自分の国がナンバー1である」という誇りを持たせる政策を徹底している

◇質疑応答
Q.「はやぶさ」後継機に積むミネルバの改善は?
A.「はやぶさ」では地球からのコマンドでミネルバを落とした。結果、コマンドが地球から「はやぶさ」に届いた15分後には、「はやぶさ」が障害物を検出し離脱噴射を開始していたため、投下に失敗した。2では、「はやぶさ」にタイミングを判断させ自律的に落とさせる。

Q.隠しコマンドで撮った写真の枚数は1枚?
A.たくさん撮った。「はやぶさ」は意味のある写真しか地球に送信しないようにプログラムされていたので、地球に送られてきたのは「はやぶさ」の太陽電池が写った1枚だけ。

Q.ラストショットを撮ったONC-W2の位置は?
A.探査機を正面から見て右横。あれは横を撮るカメラなので。

Q.ラストショット撮影後に、プロジェクトタイルが発射できるかどうか撃ってみるという話があったと聞いた。撃たなかったのか?
A.ラストショットがスムーズに撮れていたら、やっていたかもしれない。他にも試してみたいコマンドは色々あったが、ラストショット撮影に時間がかかったのでできなかった。プロジェクトタイル発射については、カプセル分離直後だと万が一カプセルにぶつかったらいけないので、分離後すぐ撃ってみる訳にはいかなかった。

講演その2 「MUSES-C『はやぶさ』カプセル回収作業」by カプセル回収班 杉浦枝里子さん

◇帰還当日のカプセル探査、3つの方法
・電波方向探査(”方探”と略す)
・光学観測
・航空機観測→NASAの航空機

光学観測担当1人、電波方角探査担当2人の3人で1チームとする。これが4チームあり、計12人。

◇電波方向探査の配置
・カプセル落下予想範囲の楕円を囲むように4カ所
・この楕円は東京湾以上の大きさ

この中のどっかに落ちるから探してね♪
→ほぼわかっていないに等しい

方向探査局各班からの情報を本部で集約し、「ここだ」

本部との連絡は衛星電話。結構途切れて大変。

◇当日の仕事
1.火球の目視確認、報告(光学観測)
2.ビーコンONの確認(電波方探)
→これは「パラシュートが開傘している」、「カプセル内部電池が生きている」の確認になる。
3.1分ごとにビーコンの一番強い方向にアンテナを向け(これを「ロックオン」と呼ぶ)、その方向を本部に報告する。

22時52分(日本時間) 火球確認
22時56分 ビーコン入感
22時57分00秒から1分ごと ビーコンをロックオン
23時09分 ビーコン消感
23時47分 ヘリコプターから目視にてカプセル発見
(回収は日が出てから)


火球が出現した瞬間、光学観測担当者以外も待機施設(キャンピングカー)の外に出てしまい、本部から「持ち場に戻ってください!」(12人中9人が外に出ていた)

みんな感無量で、本部に報告するのに無駄に叫んでいた。

消感後、一杯やりたかったが、ウーメラ立入制限区域内では飲酒禁止。曽根さん(「宇宙の電池屋」として有名)は最後まで電池の心配をしていた。
【参考】ISASメールマガジン「
宇宙の電池屋 ~方探班の一員として~」
http://www.isas.jaxa.jp/j/mailmaga/backnumber/2010/back302.shtml

本部では、1分ごとの各班からの報告の交点を結んでカプセルの現在位置をプロットする。その点が、ある時逆行し始めた。当日の風向きが再突入の方向とは逆だったので「ああ、パラシュートが開いたのだな」。「自分が初めに気付いたと自負している」(久保田)

着陸後も電波を出し続けていたので、ヘリで近づいていったらすぐにわかった。

◇帰還の前日まで
國中先生も含め現地メンバーはみんな不安だった。弱音をこぼすことも。
「見つけられなかったらどうすんの」
「それまで帰れないんだよ」
「見つけられずに帰ったら、空港で石ぶつけられるよ」
など。

ビデオ撮影担当の方は、大阪のプラネタリウムで練習してきた。
はやぶさの再突入の速度で、プラネタリウム職員の方にレーザーポインタを振ってもらう。

みんな順調に行くとは思っていなかった。あんなにきれいにビーコンが聞こえるとは。トラブルがある前提の心構えだった。

「電波さえ出ていれば絶対見つけられる」と思っていた。

◇珍事件
ビーコンについて、仕様書が曖昧で「1秒で『ピー』と『ポー』が変化する」ということしか分からなかった。0.5秒ごとの変化で1秒間の間に「ピーポー」と鳴るのか、1秒間「ピー」と鳴った後に1秒間「ポー」と鳴るのか?

分からないので、電波方探担当者は前者で練習していた。

実際は、1秒間「ピー」の後、1秒間「ポー」。当日ビーコンが受かったときは「なんだか妙に落ち着いたビーコンだね」と言っていた。

◇質疑応答
Q.帰還が昼間だったら?
A.かなり明るかったので、昼でも光学観測はできたはず

Q.電波が出なかったら
A.1日10kmずつ横一列に並んで行進してローラー作戦で探す。
最初は1日20kmだったのを、回収班が勘弁してくれと言って10kmに。まむしが出るので長靴必須。

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この他にも、この講演会のためだけに杉浦さんが撮ってきてくださった(!)、「はやぶさプロジェクトチーム」の國中さん、川口さん、吉川さんからのビデオメッセージの上映もありました

久保田さん、杉浦さん、貴重なお話をありがとうございました。

2010年12月12日日曜日

2010年12月11日わんくま同盟勉強会テーマ「宇宙広報」@新宿

わんくま勉強会@新宿でとったメモを少し手直ししたものを貼り付けます。

最初少し遅刻したのと、最後息切れしたのとで、蛇頭蛇尾です。

間違いや問題があれば、おしらせください。本日は皆さん(特に主催のguichengさん)ありがとうございました!

◇わんくま同盟 東京勉強会 #54
http://www.wankuma.com/seminar/20101211tokyo54/Default.aspx

(後日、上記URLにイベントの録画がUPされる予定です)

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guichengさん「外側から見た宇宙広報」

宇宙広報はその時代に応じたツールを使って広報を展開してきた。
  • しかし、個人の負担が大きい。→広報専門の機関が必要か?

~~~5分間ライトニング・トーク↓~~~

まことさん「5分でわかる内之浦宇宙空間観測所」

  • 肝付町
    • 漁業、農業、ロケットの町
  • ラストショットを降ろしたのは内之浦
  • アンテナ
12月5日特別公開
  • カプセル展示、ヒートシールドも。
    • もうボロボロに劣化
  • 34mアンテナ
    • はやぶさを最後まで追尾
  • 資料館
    • 特別公開時も貸切状態
  • 鹿児島空港から車で2~3時間

つうなさん「SOMESAT衛星ミッション」

ミッションとは?
  • 衛星の目的、課題
  • 理学、工学など、学術目的が多い
  • もっと一般向けがあっていいんじゃないの?
    • かぐやのハイビジョンカメラ
    • こういう一般向けのミッションがあってもいいのでは?
SOMESATって何?
  • 打上げて、世間一般の反応を見るのがミッション
  • ソーシャルメディア衛星
  • 宇宙でネギ振り!それだけ!
どんな衛星?
  • キューブサット
どんな実験を
  • オーブン170度の中で数時間ネギ振り
  • 液体窒素をかけてネギ振り
  • ブラックロック砂漠のロケットでネギ振り
みんなで宇宙開発しませんか
  • 宇宙開発はJAXAや大学だけのものじゃない

きみ@Licaさん「ファン視点での宇宙開発生中継」

種子島での生中継
  • FOMAのハイスピード網
  • 記者会見や機体移動など、ファン独自の視点を含めて
はやぶさ帰還の生放送
  • ネコビデオさんのインマルサット移動局でテレビ電話
  • インマルサットBGAN
    • 最大492kbps
  • どんな僻地でも配信できることが証明された
  • 臨場感をファンと共有できた
現場は楽しい
  • みんなも現地に行こう!

kiaさん「ウーメラでのはやぶさ帰還」

  • SNSで参加者を募って、現地集合
  • 砂漠では距離感をつかめない
  • ウーメラの砂を持って帰ってきた
撮影
  • どこから来るかわからないので、画角を広く取って

~~~5分間ライトニング・トーク↑~~~

寺薗さん「月惑星探査広報のこれから」

はじめに…はやぶさやJAXATwitter
  • はやぶさの社会現象
  • はやぶさTwitterがRTナンバー1
  • イカロスくんのwebクリエーションアワード
その裏で…事業仕分け
  • JAXAi、400件もの存続の声にも拘らず、廃止決定
ブームを支えたのは広報だ
  • もちろん、冒険的ミッション、帰還など、素材が良かったのは否定しない
  • 「はやぶさ」ミッションは、もともと打上げ前から広報に積極的で熱心な探査機だった。
    • ジャズCDなど
  • ミッション開始後も、「初」が続出する広報だった
    • ミッションを、わかりやすく的確に
  • これが結実した結果のブームだと思う
「広報」とは、を整理しよう
  • 広報…直接の対象は記者・メディア。数分から数時間。メディアを通るので、短期的な影響は大。
  • アウトリーチ(普及啓発)…ネットや広報施設などを経由。直接の対象は数十人~数万人。影響度は長期的には大。
  • 教育…学校、大学。対象は1クラスとか数十人。影響度は未知数。
月・惑星探査の広報はなんのためにある?
  • 納税者に対する説明責任
  • 感動を伝える
    • 直接的成果は研究者に、無形の利益を国民の皆さんに
  • 将来探査への支援、同調を得る
広報3つの段階
  • 今何が起きているかを正確に伝える
  • その裏にある人間模様や科学の知識を伝え、「なぜやるのか」の意義を伝える
  • 感動から次へつなげる。感動から知識に結びつけ、社会全体の価値を高める
3つがごっちゃになっている
  • JAXAは最初のワンステップ「広報」だけをやればいいはず
  • 「もっとうまくやれる」ところにまかせるべき
  • 「はやぶさ」の広報が示したのは、もうJAXAが組織として動かなくても、しっかりとした情報さえ出せば、物事は自然に進むという事実
惑星探査機広報の特殊性
  • 探査内容や目的が科学的に高度。わかりにくい。
  • 時間、空間的にスケールが大きい
    • 10年スケール
「はやぶさ」にあって「かぐや」になかったもの
  • かぐやの広報はきわめてコントロールされたものだった
  • その結果、「ここで出せばいいのに」なタイミングを逃した
    • かぐやのハイビジョン動画のダウンロード可は海外のディスカバリーチャンネルが最初だった
  • コントロールされたわずかな情報しか、ミッションの中身は知られにくくなった
    • 結果として、はやぶさの影に隠れ、忘れ去られつつあるかぐや。ミッションにかかった予算はより大きいのに。
寺薗さんの得た教訓1「人はドラマを見たがる」
  • プロジェクトXみたいな
  • NASAのプレスリリースにはよく「~ said "~~~"」のような、人が見える形を取る
    • ミッション関係者は「顔の見えない誰か」ではない!
  • ただし、単なる人間ドラマに終わらせてはいけない。そこから、探査の意義、次世代の鼓舞につなげる
教訓2「情報は圧倒的かつ整然と」
  • 月探査情報ステーションのページ数は膨大
    • 情報に飢えている人々を満足させられる量。
  • 整理されたナビゲーションとアトラクションによって、長時間楽しめるコンテンツに
  • デパートと同じ「ここに来ればなんでもある」と思わせるのが大切
教訓3「人はせっかちである」
  • 確実な情報を後から出すのではなく、その時点で出せる情報を逐次出していく
    • 間違いがあったら、あとで訂正すればいい
  • 現時点で最も早い情報伝達手段(今ならTwitter)に合わせて判断体型の見直しを
それぞれがそれぞれの役割で動く必要
JAXAデジタルアーカイブス
  • 使いにくいぞ!
  • これはそもそもメディア用。一般向けではない。
  • 鳴り物入りで始めたこれ、どうするか
  • JAXAで全部やらなくていいから、一般の人が使いやすいアーカイブスをつくるべき。
  • Webコンテンツを整理し、民間に移管を。
    • 柔軟な運用、コストダウンが可能
NPOのみなさんに
  • 自分たちが広報を主導していることを意識せよ
一般の方
  • 貴方達のつくるものが、明日の宇宙開発を動かす
  • マニアが新しい層を開拓する(アーリーアダプタ)
JAXAが用意すべき物
  • インフラ
    • これが整えば、マニアなどの層がより一層動きやすくなる
  • はやぶさで広報が注目された今こそいい機会である
おわりに
  • 私たち一人ひとりが自分の役割を理解して積極的に。

HAYABUSAが成し得た物(上坂浩一さん)

  • 「はやぶさ広報」というテーマで依頼された。そういうつもりはなかった。
    • が、結果的にそこに結びついた。
  • 宇宙に興味がなかった人たちが「はやぶさ」を知った
作るきっかけ
  • 創作意欲の発露だった
    • 「はやぶさを口実に、自分の宇宙への思いを描きたい」と人に言った記憶が
内容
  • はやぶさと「あなた」たった二人で宇宙を旅する物語
  • 最初は探査の歴史やミッション関係者など、説明を入れようと思っていた
    • しかし、スッタフから「こんな映像作品には興味はない。JAXAの偉い先生が何をしようが私には関係ない」と言われた
    • 自分はそれが大好きだったので大変ショックだった
    • でも、そういう人たちがいるのも真実。
    • そこで、そういう人たちが見ても思い入れを持ってもらえる作りにしよう
はやぶさとの出会い
  • はじめは「祈り」
    • 大筋が決まった段階で、CGは誰に依頼しようか?→上坂さんに声が
  • 宇宙研の人たちと話をして
    • この人達は仕事でやってない。損得抜きで人生をかけてる。
      • これはただごとではない!
  • 帰還のシーン
    • ワイヤフレームで荒く作って、それを相模原に持っていく途中、電車の中で見返した。涙が出てきた
      • これが「本質」だと思った
HAYABUSAは上坂さんの体験を追体験する映画
  • 最初は特別興味を持っていなかった上坂さんが、涙を流すまで。
帰還バージョン
  • オーストラリアで見てきたそのままを。
  • カプセルをひっくり返した
  • パラシュートのサイズを実際に合わせた
ラストカット(ウーメラに降り立ったカプセル)に込めた思い
  • カプセルにイトカワの砂が入ってるかどうかではなく、「はやぶさが次世代に残した物」を伝えたかった。
    • 理学工学・学術的なことではなく、生命の本質のようなこと。
帰還バージョンメイキング
  • HAYABUSA大型映像製作委員会から大反対に合った
    • 2009年版は完成されている。
    • 見た人のイメージを壊しかねない
    • 上坂さんとしても、あれが「未完成」とは思っていない
  • でも、オーストラリアで観てきたものを作品に入れたかった
  • カプセルをひっくり返せ!
    • 何回も物理シュミレーションをして、パラシュートを開いて降りてくるところから、ひっくり返るパターンを研究
    • パラシュートのテクスチャはコンビニの袋
  • リエントリ
    • まずはコンテ
    • 流体力学的な燃焼ではなくプラズマを想定
    • ばらばらになる効果
英語版HAYABUSA
  • 今年の夏に完成
  • 五島光学の監修・協力
  • 日本独自の擬人化は、アメリカで受け入れられるか?
    • 実はスクリプトから書きなおせと言われた
    • 断固拒否。同じ人間。いける自信があった。
ハワイでお披露目
  • おお受け!
  • ナッツで投票。very goodが一杯。なんとオーディエンスチョイスアワードでトップ。
    • ただ、賞状が「Return to Earth」
    • 直して!
    • おととい修正版到着。でも「Back to Earth」
  • 握手攻め
  • 日本のはやぶさミッションを知ってる人いますか?と会場で聞いたら、半分以上知っていた(ただ、会場には天文関係者が多かったのもあるが)。
HAYABUSAを作って
  • 科学で人を感動させることは可能なんだ!
  • 子供たちの反応
    • 「子供向け作品」を作ることには反対。大事なところは理解してくれている印象。
    • HAYABUSAを見た後「帰って来られないの?」と泣いて立ち上がれなくなってしまう子もいたらしい
CD発売決定
  • 帰還バージョンのために書き下ろした1曲も収録
帰還バージョンのポスターも作成中
スッタフ募集中!
  • 会社として次の作品の作成へ動き出している

アウトリーチ活動に関するあれこれ(IES兄 細田さん)

HAYABUSAを見て
  • やべぇ、ハッピーエンドが描いてある…
広報の専門家ではない
  • 自分は電気推進・電源系の研究者
  • なぜ広報をしたか
    • もともと交流好き
    • JAXA自体の知名度が低い
      • 普及に勤しまなきゃ、という意識はあった
  • はやぶさの関心の高まりに対して、少なすぎる情報
    • 某巨大掲示板では憶測を前提にした議論・喧嘩
    • はやぶさ帰還に際して「なにかやってよ」とのことだったので、これ幸いと飛びついた
戦略的に広報を
  • はやぶさは認知度がもともと結構高い
    • 裸で行っては駄目だ。方針をきちんともっていかねば
  • 広報の歴史を勉強
ISAS広報の歴史
  • 周東三和子さん
    • 観測ロケット時代からの広報
    • 宇宙研ロビーの展示
  • 小野瀬さん、奥平さん
    • はやぶさ君の冒険日誌
  • 的川さん
    • 漁業交渉から記者対応まで、なんでもござれ
    • 星の王子さまに会いにいきませんかキャンペーン
    • タッチダウン時に記者さんへの情報の橋渡し役
  • 寺薗さん
    • はやぶさにカメラチーム
      • カメラ(ビジュアル)と広報は密接に関わるということで、広報も。
    • タッチダウンブログ
  • 松浦さん
    • L/D
  • はやぶさまとめWiki管理人さん
    • はやぶさの実質的なポータルだった
  • 5thstarさん、エミリーさん、Subaruさん、福盛さん
  • ファン活動
    • 案山子
    • おつかいできた
    • 擬人化(ALUMIIさん、しきしまさん、あしべさんetc)
  • HAYABUSA BACK TO THE EARTH
    • ファンが観ると色々脳内補完されて泣ける
  • はやぶさジャズ
  • 吉川真さん
  • 阪本成一さん
  • 清水幸夫さん
過去の例を参考に、「今」やるべきこと
  • ライト層(タッチダウンも知らないレベル)…情報を探せないでいる
  • コア層…ハートはがっちり捉えられているが、情報に飢えている
というわけで
  • 1次情報の発信源として機能しつつ、普及・教育・啓発に力点を
  • キーワードは「共感」と「本物」
    • 人は人格に共感する
      • 4人(IES兄、ばあや、deltaV、はやぶさ君)の書き手の人格を明らかに
    • はやぶさの魅力は圧倒的に「本物」な技術と人間ドラマである。
      • 関係者メッセージ(普段表に出てこない人に登場してもらう)→確かな手応え
      • 初めの方に川口さん「はやぶさ、そうまでして君は」。おいおいまだ先は控えてるのにクオリティ高すぎるよ
  • インタラクティブ性の確保
    • ファンは今まで、はやぶさに「頑張れ」と伝えたいだけ、ただそれだけが叶わなかった
      • Twitterのmention、ブログのWEB拍手、で簡単にすることができた
  • 「帰還」にスポットしたポータルサイト(帰還ブログ)の作成
    • どこが公式?に答えるサイト
手応え
  • オタクじゃない30代以上の人からの反応が良い
    • 「また学びたい。知ることが多い」
    • 先人たちの「投資」の結果
  • はやぶさを通して他の宇宙機に興味を持ってくれた
チームを組んだのは良かった
  • 理学1、工学2、ベテラン1、WEB担当1
  • 息切れせずに済んだ
  • 場当たり的にやらずに、計画的に
  • 一つの広報のモデルケースに。
    • 「はやぶさがうまくやったじゃない、ウチもできるよ」
大変だった
  • WEB独特の文化、情報リテラシーを学ぶ必要性
  • 専門家がいれば、やはり良かったか
今後への教訓
  • 研究者の領分を犯さない範囲でタイムリーに
  • 画像はやはり分かりやすくて良い!
    • ないなら、研究者が情熱を持って語る
    • もしくはCG。外注してもいい(IKAROS君のCG)
インタラクティブ性に気を使いながらも、情報の吸い上げには注意した
  • リプライは返すの?
  • トラックバックは?
Twitterの拡散力は強力
  • しかし頼りすぎたか?
  • サーバーエラーで見られない人もいた
  • 食わず嫌いの人もいた
  • ブログとの住み分け
  • さかのぼりにくい特性
  • 間違いの訂正が困難
  • そこだけRTしないで!
1アカウントで3人
  • 偏りが出なくて良かった
  • 人格分裂?という勘違いも生んだ
フォロワの推移
  • 爆発的に増えたのは、3大メディアに取り上げられてから
    • なんとか、3大メディアとWin-Winの協力関係が出来れば?
成果をどう評価するか
  • 我々は社会系の知識を持たない
  • 他との外部連携はできたか?内部広報はできたか?
  • 海外へのアピールが不足していたか?
今後望む形
  • 「共存共栄」を望む
    • リスペクトと二次創作を楽しんで欲しい
    • ねだるな勝ち取れ
    • JAXAが情報発信をリスクと感じれば、普通なら出してくれる情報も絞られる可能性
  • 研究者も「継続的な情報発信」を常に意識する時代になっている。この意識付けを組織で徹底すべき
  • ボトムアップ広報よ今後も続け
最近のユニークな取り組み
  • あかつきくん、IKAROSくん、みちびきさん
    • キャラクターの姿を借りた、本音のぶつかり合い
    • 「無茶ブリ」は予定調和ではなくガチです
みなさんへ。講演会を聴くコツ
  • その先生の、哲学を質問せよ
    • なぜこの道を選んだのですか?なぜここに人生を賭けているのですか?
    • あの時、なぜAではなくBを選んだのですか?
  • たぶん、聞いて欲しいところ。

パネルディスカッション(寺薗さん、細田さん、上坂さん、まことさん、大貫さん)

  • 宇宙に興味を持ったキッカケ
    • 寺薗さん…TVでやってたCOSMOS
    • 上坂さん…天文少年。新聞配達のバイトをやって望遠鏡買ったり
    • 大貫さん…COSMOS、銀河鉄道999
    • まことさん…曖昧。毛利さん?
    • 細田さん…元からオタク。トップを狙え!とかで宇宙に
今後の有人のあり方は?
  • まこと:ISSは低すぎる。地球を星空の一つの星として見たい。火星から見る地球。
  • 大貫:我々が写真や絵から見る地球のビジュアルは、宇宙飛行士の体験のほんの一部に過ぎない。ISSくらいの低軌道でも、すごい体験ができる。
  • 細田:政治家を宇宙へ送ったら?きっと世界観が変わる。
  • shinai_tsugumi:ISSからの野口さんの写真、見た人の反応。地球の綺麗さを実感できたし、地球にいろんな人が住んでいて繋がっていることが実感できた。お金もかかったし、紆余曲折合ったけどISSはやってよかったのでは。低軌道、高軌道、それぞれの良さがある。
今日は東京で3つくらい宇宙関係のイベントが
  • 寺薗:10年前はこんな事態想像しなかった。宇宙エレベータなんて夢物語だと思ってたが、材料の問題など、具体的になってきた。10年後はどうなる?
10年後はどうなる
  • 上坂:指数関数的に進む世界。でも、エアカーはまだ飛んでない。
あかつきの6年間
  • まこと:6年間、黙っておく手はない。今の高校生があかつきに興味を持つと、6年後大学院生になって、金星到達したあかつきで論文を書ける。
  • 寺薗:衛星の完全な情報公開をしたい。はやぶさは「今週の」はやぶさ君だった(提案時は「今日のはやぶさ君」だった)し、起動情報しか載せてなかった。自動車のメータを読むが如く、常に全ての情報を公開したい。「今日のセレーネ」の案もあった。
ファンの知識
  • 大貫:イベント型のファン。追っかけ型のファン。二通り。
    • 追っかけ型は、例えば「あかつき」そのものが好き。金星到達、噴射失敗、それぞれの事象(イベント)は大事じゃない
    • イベント型は刹那的。その事故ってつまり失敗なんですか?
継続的は広報の困難。雑誌などがペイしない。JAXAが色々先導すべきでは。
  • 上坂:制作に当たってJAXAからもらったデータは少ない。CADデータももらっていない。
  • 寺薗:webでもいいからもっともっと出していくべき。それがJAXAにプラスに成ることをわかってもらはないと。3機関統合前のプレスリリースが読めなくなってる。H-II8号機の事故の時に色々有意義な情報が公開されたのに、全部見えなくなった。
  • まこと:広報誌はJAXAが出すべきじゃないのでは。民間に委託し、利益を得るべきでは
  • 寺薗:まさにそれ。JAXAは一次情報に徹するべき。
最後に
  • 大貫:JAXAから一般の方まで富士山のようななだらかな坂の中にいる。私たちも。
  • 寺薗:この10年で宇宙イベントが活性化。世界から見たら、日本は宇宙好きの国に見えるかも?「ねだるな勝ちとれ」。自分で動こう。
  • 上坂:はやぶさは多くの物を残してくれた。自分もHAYABUSAを作れたから、次の映像を作れる。
  • 細田:先人の成果はやはり大きい。
  • まこと:自分も1ファンとしてやれることをやっていくので、ご協力を。

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