2010年10月9日土曜日

10月9日_ちきゅうTVスペシャルイベント@科学技術館 に参加

【10月22日追記】
JAMSTECよりイベントのダイジェストムービーが公開されました。
ですので、見ながら若干加筆&修正しました。
主要な加筆部赤字、主要な訂正部打ち消し線
その他細々した表現を直してたりします。
(追記終)

10月9日に科学技術館で行われた「ちきゅうTVスペシャルイベント~神秘に包まれた海底下生命圏の謎に迫る~」に参加してきました。

イベントの詳細は以下を参照。

沖縄トラフ研究航海、共同主席研究者の高井研さんと、「ちきゅう」TVでナビゲーターを務めるサッシャさんの対談トークイベントでした。

今回は、試しにiPhoneのアプリ「ATOK Pad for iPhone」とBluetoothキーボードの組み合わせで(膝の上で)メモを取ってみたので、それを若干手直しして貼りつけています。
イベントでデジタルでメモを取ったのは今回が初めて。

【注意】急いでメモを取っていたので、内容の正確さにはあまり自信が持てません(お気づきの点がありましたらご指摘ください。訂正致します)。今回のトークショーは録画(編集版だとは思いますが)がYouTubeのJAMSTECチャンネル http://www.youtube.com/user/jamstecchannel で公開予定とのことですので、 そちらと合わせて御覧になることをおすすめします。抜けもかなり多いです。 

また、文章だと淡々としてしまいますが、高井さんは非常に「ハジけた」雰囲気であったことを書き添えておきます。 


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(サッシャさん登場)

概要の紹介。海底探査について。

・IODP
海底、ひいてはその下の調査を行う国際プロジェクト。24カ国が参加。

・「ちきゅう」
JAMSTECの大型掘削船。9月1日~10月4日、沖縄トラフ掘削探査。

(高井さん登場)

以下、さ=サッシャさん、高=高井さん。

さ:研究航海を終えて。
高:30日間アドレナリン出っぱなしだった。いつも、しんかい6500などに乗るとアドレナリン出まくりで、次の日一日動けなくなるのだが、今回はそれが30日も続いた。いまは疲れて灰のよう。
さ:今日だけはアドレナリン復活させてください。

さ:普段はどんなことをしている?
高:昼は研究チームを束ねる監督業で、雑用が多い。夜になると、微生物の研究を始める。基本的には微生物学者だが、大きな海底生物の研究もする。あとは、冒険的科学者として、世界中の深海にはどういう環境があるのか、「しんかい」などに乗って調査に行くことも。
さ:昼間は中間管理職?
高:そうそう。
さ:そもそもどうして海洋研究に?
高:物知り博士はいやだった。「魚に詳しいね」と言われるのは嫌いだった。生命の神秘に迫る本質的な仕事をしてやろうと。
さ:研究室は微生物のペットショップみたいな感じ?
高:そう。
さ:名前付けてたり?
高:そう。但し学名だけどね。すでに50種ほど学名を付けた。普通の人は自分の子供ぐらいしか名前をつけることはないだろう。自分には50人子供がいるようなもの。

高:海底の大半にはほとんど生物はいない。でも熱水噴出孔など局所的に爆発的に生物がいる。
(今回の研究航海の紹介ビデオ上映)
掘って、人工的に熱水を噴出させる。人工熱水噴出孔。世界初。
高:硫化水素が出てきて、待避。個人的には危なくないと思うのに。

さ:今回の目的は。
高:海底の熱水と、その下にいる微生物の探査。

さ:結果は。
高:熱水は網目状に分布している、海底の川だと思われていた。その隙間にワサワサ生物がいるのだろうと。しかし、掘ってみると、どこからも吹き出す。海底の湖だった。常識が覆った。この航海一番の発見。教科書なんて嘘ばっかり。想像ばっかり。僕らもそうだと思っていた。
さ:川みたいになってるところが多い?
高:そっちがメイン。今回はまれ。
さ:何が覆る?
高:海全体の熱収支・物質循環を考えるとき、熱水の影響は中央海嶺のものぐらいしか考慮していなかった。しかし、こういうのが大きく影響を持ってる可能性。
さ:何を、さらに調べたい?
高:熱水の湖の中が気になる。個人的には生物や化学的作用が。他に、鉱物資源がたくさん沈殿してるはず。
さ:それで、我々の生活は変わる?
高:さあ?科学は芸術と同じ。心を豊かにする。知らないことを知る感動を共有できればと思っている。

高:いろんな研究結果から、熱水の「湖」があるだろう、と結論づけた。

さ:一番の苦労は。
高:25人程の研究者のとりまとめ。
さ:陸と同じじゃないですか。中間管理職。
高:欧は自己主張少ない。アメリカはうるさい。

高:もともとはJAMSTECの中でも反「ちきゅう」派だった。乗ってみたら、良い船。
さ:何がすごい?
高:数センチの誤差しかなく、狙ったところを掘れる。
さ:陸から1000mの旅してきても船から海底まで1000mあっても、数センチ?
高:そう。
さ:ゴルゴ13並のスナイパーだ。
高:あと台風に強い。直撃しない限りは逃げなくていい。

さ:今後は。
高:微生物の証明。生物の方は結果が出るまで時間がかかる。熱水噴出孔の直下にいる微生物が、今回の研究航海の当初の目的。また、今回の航海は、沖縄トラフの熱水の源を見つけて掘るという大きな目的の一部でしかない。来年以降、シーズン2をやりたい。ただいま政治工作中。
私の究極の目的は、すべての生命を生んだ最初の熱水を見つけること。いろんな熱水がある。僕は、それはインド洋にあると思ってる。インド洋で生命が誕生したという意味ではない。そこが、最初の熱水に一番近い性質をもっているだろう、という意味。

質疑

Q今回掘った人工熱水噴出孔のこれからは。
答え:その熱水を船を派遣して見に行く。海水が混じらない、ピュアな熱水の採取をする装置も開発中。
あと、新しい熱水ができた場合、どの生物が最初にコロニーを築くのか。ビデオカメラをおいて観察したい。

Q今回の掘削、ジョイデス・レゾリューション号では無理だった?
答え:個人的には無理だと思う。アメリカの研究者は出来ると言うが、そんなに精度よく掘れない。また、オプション装備が少ないので出来る科学探査の幅が狭い。

Qどうして、誤差なく狙った場所を掘れるのか?
答え:GPSと海底に沈める音波発生器の組み合わせ。宇宙と海底、両方で位置を決める。そしてスラスターで位置を保持・補正。

でも、実際のところずれる。なので、合ったときにエイヤッと掘る。今回の掘削では3時間くらい合うまで待った。

Qどうして研究者に?
答え:「〇〇屋さん」になりたくなかった。「何か」になりたかった。自分が生きている証を作りたかった。科学者はうってつけで簡単。最初は小説家目指してた。


Q熱水噴出孔は350程あると聞いた。どうやって見つけたのか。
答え:熱水が出るのは火の気があるところ。だから地球の構造を理解するとだいたいわかる。
次は、その範囲に熱水由来の成分がないか延々調査する。
見つかったら、無人探査機で調査。数km四方まで限定。
そうしたらしんかい6500などで潜っていって、実際に見つけにいく。


Q「最初の生命の熱水」、はどうやって判断?
答え:40億年前の熱水は残っていないので、それと比べることはできない。イコール、絶対に同じ、とは言うことができない。より確からしい証拠を集めて、一番多くの人を納得させた人の勝ち。100か0かじゃない。65:35ぐらいで決まる。そこに科学の魅力を感じる。絶対はない。


Q研究をして発表をする人間は、間違いを起こすことに臆病になりがち。なぜハジケられる?
答え:僕は明治維新時代の武士を目指している。自分の言ったことには、責任をとればいい。間違いはだれにでもあるので、責任をとればいい。間違いを隠そうとすることの方が問題。間違うことを恐れずに、正しいことをたくさん言いたい。


Q:地下の熱水の中にも生物はいるの?
答え:有機生物の炭素結合は熱に弱い。さすがに200度を超すような熱水のただ中にはあまりいないだろう。アメーバとかミジンコの親戚みたいのがいると言われているが、なかなか発見できない。「大きな生態系」はないだろう。土の隙間の中なので、物理的にスペースがないから。