個人的に気になって調べたことのメモ。間違ってたら教えてください。
はやぶさのカメラは全部でいくつ?どれが何を撮影したのか?
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まず、カメラは以下の4つ。
- 望遠光学航法カメラ(ONC-T/AMICA)
- 広角光学航法カメラ1(ONC-W1)
- 広角光学航法カメラ2(ONC-W2)
- スタートラッカー(STT)
ONCは「オプティカルナビゲーションカメラ(光学航法カメラ)」の略で、イトカワとの相対距離や相対速度を計測し、「はやぶさ」を誘導するのに用いられた。
1.望遠光学航法カメラ ONC-T/AMICA
ナビゲーションカメラであり、科学観測カメラとしても用いられた。「はやぶさ」はそもそも工学実験機としての色合いが強いMUSESシリーズの探査機であるため、理学観測専用のカメラは積まれていなかった(M-Vロケットの打上げ能力に依存する問題でもある)。
ナビゲーション時の名称はONC-T(望遠光学航法カメラ)。TはおそらくTeleのT。狭視型光学航法カメラとも。
科学観測時の名称はAMICA(アミカ・小惑星多色分光カメラ)。
AMICAとして使われるときは、8つの回転式フィルター(7バンドの色フィルタと偏光子)を使い分け、イトカワを分光観測することが可能。
イトカワの画像を2000枚以上撮像し、地形のマッピングや、表層の色観測、着陸地点の選定などに使用された。
以下代表的な画像。
↑2004年5月の地球スイングバイの直前に撮影された地球。単色フィルタ3枚合成でカラー化されている。
↑2004年5月19日の地球スイングバイの際に撮影された画像。午後12時30分前後に約5分毎に撮影された画像のアニメーション。台風2号、3号が写っている。
↑おそらく最もよく見る小惑星イトカワの画像。「らっこ」の加工がなされたのもこの画像。
ちなみに搭載された位置は、はやぶさを正面から見たとき、探査機底面の、サンプラーホーンの左側・ミネルバの前方辺りのはず。
2.広角光学航法カメラ1 ONC-W1
噛みそうな名前のカメラその1。WはおそらくWideのW。モノクロ撮影。
イトカワとの距離測定に使用された他、フラッシュランプとの同期撮影が可能で、タッチダウン時にターゲットマーカーを撮影。
以下代表的な画像。
↑地球スイングバイ時、2004年5月19日の午前11時頃に撮影された7枚の画像のアニメーション。広角カメラなので、望遠カメラで撮影したものより対象は小さく写る。
↑2005年11月9日に行われた降下試験時に撮影された画像。白く光っているのが投下されたターゲットマーカー(1つ目)。このターゲットマーカーはイトカワへは到達しなかった。
↑2005年11月19,20日に実施された第1回タッチダウンの際の画像。11月20日午前5時33分、高度32m付近で撮影された降下中のターゲットマーカー(2つ目。黒丸内)。88万人の署名入り。
↑2005年11月26日に実施された第2回タッチダウンの際の画像。午前6時24分撮影。はやぶさの影の左上にターゲットマーカー(第1回タッチダウン時に投下したもの)。第2回タッチダウンでは、新たなターゲットマーカーは投下されなかった。また、ターゲットマーカーを使用した姿勢制御も行われなかった。
搭載された位置は、はやぶさを正面から見たとき、探査機底面の右奥、障害物センサーと化学スラスタの間、のはず。
3.広角光学航法カメラ2 ONC-W2
噛みそうな名前のカメラその2。モノクロ撮影。
主な機能はW1と同じだが、スタートラッカーの予備として考えられていた(W1も?)。
以下代表的な画像。
↑地球スイングバイ後の2005年5月19日、20時~深夜0時にかけて撮影された3枚の画像。だんだんと地球が遠ざかっていく。
ONC-W2は、スタートラッカーの予備としての役割も帯びていたため、暗い星も写るように明るめにレンズが作られており、地球のような明るい天体を撮影するには不向きで、スミアが発生してしまう。イトカワ観測時には、スミアのみの画像を通常画像の直後に撮影して減算処理することで対応していたが(はやぶさには画像処理回路が搭載されている)、これははやぶさの姿勢が安定していなければ不可能であるため、ラストショットはスミアが乗った状態でダウンリンクされた。それをAMICAチームが見事に処理したものが、スミア除去版の画像である。こっちの画像ももっと評価されるべき!
搭載位置は、はやぶさを正面から見たとき、再突入カプセルの右横のはず。右側面の前方のはず。
以上3つの光学航法カメラはイトカワ離脱後その役目を終え、節電のためヒーターを切っていたので、ラストショットのために再起動させたときは動くかどうか不安があったそうだ。
4.スタートラッカー(STT)
星姿勢計、スタートラッカー・STT(STar Tracker)。星を撮影することで探査機の現在の姿勢を計測する装置。
以下代表的な画像。
↑はやぶさが初めて捉えたイトカワ。背景の恒星と違い、日に日に移動していることがわかる。
↑2009年11月12日に撮影された火星としし座。中央のひときわ明るい星が火星。下はしし座をわかりやすく加工したもの。
↑2010年5月12日、帰還を目前に控えたはやぶさが捉えた地球と月。一番明るく、ブルーミングを起こしているのが地球。その左にあるのが月。
搭載位置は、はやぶさを正面から見たとき、再突入カプセルの上、探査機前面のほぼ中央のはず。
※搭載位置に関しては模型などを参考にしているので、実際と異なる可能性あり。
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